研究概要 |
雄Sprague-Dawleyラット(240-280g)のくも膜下腔にYakshらの方法でPE-10カテーテルを挿入し、1週間後に神経学的異常のないラットを実験に用いた。特異的GlyT2阻害薬ALX-1393(control, 1, 5, 10mM)を10μlカテーテルから注入し、15分後から2時間後に熱刺激及び機械刺激による逃避行動実験(Hot-plate test、TaiI-flick test、Pawpressure test)、化学刺激による疼痛行動実験(Formalin test)と運動機能実験(Rotarod test)を行った(n=7-9)。さらにグリシン受容体阻害剤のストリキニーネ(10μg)を15分前に投与しALX-1393(10mM)の作用の変化を調べた。結果はANOVAを用いて解析し、P<0.05を有意とした。 ALX-1393はHot-plate test、 Tail-flick test、 Paw pressure testにおいてcontrolと比較して用量依存性に逃避反応の潜時を延長した。5mMで有意な効果を認めた。これらの抗侵害作用はストリキニーネ前処置により完全に抑制された。またFormalin testでの第2相反応を用量依存性に抑制した。10mMでは第1相反応も抑制された。一方、Rotarod testではALX-1393は高濃度では運動機能を抑制したが可逆的であった。ラット急性痛モデルにおいて髄腔内に投与したGlyT2阻害薬ALx-1393は抗侵害作用を認めた。運動機能に影響を与えない投与量を用いることで新しい鎮痛薬としての可能性が示唆された。 前年に引き続きラット坐骨神経を結紮して神経障害性疼痛モデルを作成した。コントロール群には坐骨神経の同部を剥離・露出させるsham operationを施した。ALX-1393(control, 1, 5, 10mM)とGABAトランスポーター阻害薬nipecotic acid(control, 10, 30mM)の髄腔内投与による鎮痛作用について検討した。熱刺激過敏性を調べるPlantar testと機械刺激過敏性を調べるVon Frey testでいずれの薬物とも用量依存性に鎮痛作用を認めた。神経障害性疼痛に対する治療薬としての可能性が示唆された。
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