研究概要 |
前年度までの研究結果から脊髄における抑制性神経伝達の増強により急性痛・炎症性疼痛・神経因性疼痛に対して強い抗侵害作用が現れることが分かった。著者は中枢神経系に豊富に存在しグリシンやGABAと同様にアミノ酸で抑制性神経伝達物質として働くタウリンの異なる神経因性疼痛に対する効果を調べた。雄Sprague-Dawleyラット(170-220g)のくも膜下腔にYakshらの方法でPE-10カテーテルを挿入した。坐骨神経を4回緩く結紮するchronic constriction injury(CCl)モデルとストレプトゾトシンを1回腹腔内投与する1型糖尿病モデルを作成した。タウリン(10,20,40,80μg11μL)の髄腔内投与の抗侵害作用について1.Plantar test 2.Electronic von Frey test 3.Paw pressure test、運動機能について4.Rotarod testを行った。タウリンの作用に関与する内因性鎮痛機構を調べるためグリシン受容体阻害薬、GABA_A受容体阻害薬、α_2受容体阻害薬、5-HT_3受容体阻害薬、オピオイド受容体阻害薬をタウリン注入10分前に腹腔内投与し、影響を調べた。その結果、両方のモデルでタウリンは用量依存性に機械刺激によるアロディニアと痛覚過敏を抑制した。CClモデルでタウリンは用量依存性に熱刺激による痛覚過敏を抑制し、また運動機能を抑制した。CClモデルでタウリンの作用はグリシン受容体阻害薬で完全に消失した。以上の結果からタウリンの抗侵害作用は主にグリシン神経伝達の増強により発現していることが分かった。本研究でグリシン作動性神経が侵害受容伝達において重要な役割を担っており難治性疼痛治療のターゲットとなる可能性が示唆された。
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