全ての検討で、雄性ウィスター系ラットを用いた。 1.膀胱血流の変化の検討 レーザードップラー血流計で膀胱血流を測定した。8週齢を用いた検討では、去勢後24時間で一時的に血流の増加が見られたが(p<0.001)、その後の時期(48h、1、3、6週)に関しては有意な変化を認めなかった。幼若例と成熟例を用いた去勢12週後の検討では、controlと比較して成熟群において去勢群で血流の増加が見られた(p<0.01)。また去勢群における検討では、幼若群において血流の低下が見られた(p<0.01)。 2.膀胱機能、刺激症状に対する反応の検討 ラットを8週齢で去勢し8週経過後使用した。膀胱瘻から生食、その後0.25%酢酸溶液をそれぞれ5ml/hで1時間ずつ灌流し、麻酔下に膀胱内圧測定を行った。1時間あたりの排尿回数の比較では、去勢群において排尿回数が減少傾向で、特に生食でその傾向が強かった。また去勢群においてはcontrolよりも酢酸による緋尿回数の増加が大きい傾向にあった。最大収縮圧の比較では変化を認めなかった。全ての項目において有意差は認めなかった。 3.膀胱、血管の組織学的変化の検討 4週齢と8週齢で去勢したラットが12週経過したところで、膀胱と大動脈、総腸骨・内腸骨動脈を摘出した。動脈では、大動脈でのみ中膜の萎縮、外膜の線維化傾向が幼若群において見られた。膀胱では、幼若群で粘膜の萎縮傾向が見られたが、筋線維、膠原線維などは変化が見られなかった。 結論と今後の展開 膀胱の血流は、成熟群と幼若群で違いがある印象であった。蛍光マイクロスフェア法による再検討を行い、レーザードップラー法との比較を行う。膀胱機能は去勢により排尿回数が減少する傾向にあり、アンドロゲンが膀胱機能に関与すると考えられた。無麻酔・無拘束下の条件でさらに検討する。また紹識学的には、幼若時からのアンドロゲン除去にて大動脈、膀院にわずかな変化が起こった。より微量な変化を検出するため、リアルタイム定量的PCR法を用いて膀胱、血管におけるandrogen reseptor、CTGF、TGF-β、VEGFなどのmRNA発現量を比較する。
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