全ての検討で雄性ウイスターラットを使用した。 1. 性ホルモンによる膀胱血流の変化 平成19年度に施行した検討を、蛍光マイクロスフェア法にて再評価した。4週齢で去勢した幼若群(Y群)、8週齢で去勢した成熟群(A群)とコントロール(C群)3群を12週経過後実験に使用した。結果は、C群1.37±0.30、A群1.25±0.52、Y群1.45±0.61(mL/min/g)であり、性ホルモン低下に伴う膀胱血流の変化は見られなかった。層また去勢時期による違いも見られなかった。 2. 男性ホルモンと膀胱機能、刺激症状に対する反応に関する検討 平成19年度に施行している検討を継続した。膀胱瘻作成1週間後にメタボリックゲージに入れ、無麻酔・無拘束下に膀胱内圧測定を行った。生食は5ml/h、その後酢酸0.25%濃度の溶液を5ml/hでそれぞれ1時間灌流した。前の検討と同様に、Y群、A群とC群3群を使用した。排尿筋圧は生食群、酢酸群とも有意差を認めず、また3群間においても有意差は認めなかった。排尿間隔は、全ての群で酢酸群において有意に短縮した(p<0.01)。またC群に対してY群で、酢酸群において有意に排尿間隔が短縮していた(4.4±2.0v.s.3.3±2.3min. ; p<0.05)。1回排尿量も同様の傾向であった(0.37±0.22v.s.0.28±0.20mL ; p<0.05)。 結論と今後の展開 アンドロゲン低下が膀胱機能に影響を及ぼすことが確認された。わずかに認められた組織学的変化も関連が疑われる。しかし膀胱の血流は、アンドロゲン低下、またその時期によらず変化が見られなかつた。今回の結果を再検証することを含めてオキシブチニン、ミルナシプラン投与による膀胱機能の変化を検討する。また平成19年度に行った組織学的検討を再検証するために、検体数を追加して検討を行うこと、さらに微量な変化を検出するため、リアルタイム定量的PCR法を用いて膀胱、血管におけるGTGF、TGF-β、VEGFなどのmRNA発現量を比較する。
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