パーキンソン病をはじめとした大脳基底核に変性を有する疾患では排尿障害を呈することが明らかになっており、特に蓄尿障害が著明である。大脳基底核のなかで特に黒質線条体系ドパミンニューロンが排尿に関わっていると考えられているが、ラット・サルなどの動物を用いた実験でドパミンD1様受容体は排尿反射に対して抑制的に作用することが明らかになっている。また以前我々はネコ線条体ニューロンの一部に排尿サイクルに関連して発火するニューロンが存在することを確認した。今回我々は麻酔下のネコに対しドパミンD1受容体アゴニストのSKF38393を経静脈的に投与し、膀胱内圧と排尿反射に関連した線条体ニューロン活動との関係を検討した。SKF38393を経静脈的に投与し排尿反射が抑制されることを確認した。また排尿反射に関連した線条体ニューロン活動は、蓄尿期における活動が亢進している傾向が認められた。 現在使われている抗パーキンソン病薬はD2様受容体に対する親和性が高く、運動症状は有意に改善するが、ヒトでも動物でもD2様受容体は排尿反射に対して促進的に作用し蓄尿障害は悪化させると考えられている。パーキンソン病患者におけるD1様受容体の役割はよくわかっておらず、ジスキネジアを悪化させるとの報告もあるが、今回の我々の検討によりD1様受容体は線条体ニューロンレベルでも排尿反射に対して抑制的に作用する可能性が示唆された。パーキンソン病患者は運動機能障害があるため、尿意を催してもトイレまで間に合わずに失禁してしまうことがあるが、D1様受容体作動薬は蓄尿障害を改善することが期待できるため、今回の我々の検討結果はD1様受容体作動薬を中心とした新たな抗パーキンソン病薬の開発につながるものと考えられる。
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