パーキンソン病をはじめとした大脳基底核に変性を有する疾患では排尿障害を認めることが明らかとなっている。以前我々は黒質線条体ドパミンニューロンに着目し、正常ネコにおいて線条体の一部で排尿反射に関連するニューロンが存在すること、蓄尿期に線条体ドパミン濃度が上昇すること、ドパミンD1受容体アゴニストの投与で排尿反射が抑制されることを示した。大脳基底核の中で視床下核も排尿反射に関わっていると考えられており、進行期パーキンソン病患者に用いられる視床下核脳深部刺激療法が運動症状のみならず排尿症状も改善することが報告されているが、その詳細は明らかでない。そこで我々は麻酔下の正常ラットに対して視床下核脳深部刺激を行い、排尿反射に対する影響を検討した。また視床下核脳深部刺激により線条体内のドパミンも変化する可能性が考えられるため、脳深部刺激による線条体内ドパミン濃度の変化をマイクロダイアリシス法を用いて検討した。 視床下核脳深部刺激により刺激中は膀胱収縮間隔が延長する傾向が認められ、視床下核脳深部刺激は排尿反射を抑制する作用があることが示唆された。また線条体内のドパミンやドパミン代謝産物も視床下核脳深部刺激により上昇する傾向が認められた。 視床下核脳深部刺激療法のメカニズムについては不明な点が多く、特に排尿機能に対する作用についてはほとんどわかっていない。本研究の結果からは、視床下核の電気刺激による直接的な効果、線条体ドパミンを介した間接的な効果が考えられる。 進行期パーキンソン病患者における治療法として、視床下部脳深部刺激療法が広く用いられるようになり、本研究は治療メカニズムの解明につながるものと思われる。
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