平成19年度本研究にて、浸潤性膀胱癌に対するシスプラチンと放射線療法を併用した導入化学放射線療法が施行された浸潤性膀胱癌症例の診断時生検標本を使用した免疫組織学的検討とその臨床経過の比較検討から、組織中のErbB2、NFκBの発現の程度が、化学放射線療法の治療効果と強く関連を示すことが判明した。平成20年度本研究では、これらのanti-apoptoticシグナル蛋白群の化学放射線療法耐性への寄与を検討するため、低分化膀胱癌細胞株(T24 cell、及び5637 cell)を用いた化学放射線療法modelを作成した。このモデルを使用し、クロノジェニックアッセイ、及びアポトーシスアッセイにて、ErbB2、NFκBの発現抑制により、化学放射線療法耐性が克服されることを確認した。さらに、正常人尿路上皮初代培養細胞において、これらの蛋白群の発現抑制による影響が少ないことを同アッセイにて示した。これらの結果は、ErbB2、NFκBの発現の程度の評価により、浸潤性膀胱癌に対する化学放射線療法治療効果の予測モデルを作成し、適切な治療対照群を選別するとともに、同蛋白発現を調節することで、正常組織への影響は少なく、その化学放射線療法耐性を克服する可能性を示すものである。 現在、化学放射線療法耐性をもつ膀胱癌細胞株を使用し、ヌードマウスの皮下膀胱癌モデルを作成し、同モデルにおけるErbB2、NFκBの発現抑制により、シスプラチンを用いた化学放射線療法耐性の克服が得られることを確認することを検討中である。
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