平成19-20年度、本研究にて、浸潤性膀胱癌症例におけるErbB2、NFκBの発現が化学放射線療法の感受性を規定すること、低分化膀胱癌細胞株において、ヒートショックプロテイン90(Hsp90)阻害剤によるこれらの蛋白群の抑制により化学放射線療法耐性が克服されること、及びその効果が正常尿路上皮初代培養細胞においては少ないことを示した。平成21年度本研究では、低分化膀胱癌細胞株(UM-UC-3 cell)を使用し、ヌードマウスの皮下膀胱癌モデルを作成した。そのモデルにて、ErbB2、NFκBの発現を抑制させる濃度のHsp90阻害剤である17-allylamino-17-demethoxygeldanamycin(17-AAG)投与により、シスプラチンを用いた化学放射線療法耐性の克服が得られることを確認した。また、低分化膀胱癌細胞株(T24 cell)において、細胞質内で抗アポトーシス効果を担うAktが化学放射線療法により核内に移行すること、そのAktの核内移行がHsp90阻害剤である17-demiehylaminoethylamino-17-demethoxygeldanamycin(17-DMAG)により効果的に阻害されることを蛍光免疫染色法およびウエスタンブロット法を用い示した。様々な増殖因子によりAktの核内移行が誘導され、核内Aktが抗アポトーシス効果を起こすとの報告があり、化学放射線療法により誘導されるAkt核内移行に対する、Hsp90阻害剤による阻害効果は、Hsp90阻害剤による化学放射線療法耐性克服の一機序となっているものと考えられた。本研究結果は、ErbB2、NFκBの発現の程度の評価により、浸潤性膀胱癌に対する適切な治療対照群を選別するとともに、Hsp90阻害剤により同蛋白発現を抑制させることで、正常組織への影響を少なく、その化学放射線療法耐性を克服する可能性を示すものである。
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