頻尿、尿意切迫感、切迫性尿失禁のような症状を持つ過活動膀胱の患者数は、増加している。過活動膀胱の病因は、中枢神経や脊髄の障害によるもの、下部尿路通過障害によるもの、その他明らかな原因が特定されないものなど多彩であるが、膀胱などの下部尿路の障害だけにとどまらず、中枢神経が大きく関与していることが示唆される。橋排尿中枢や中脳水道灰白質が排尿に関与することは古くから知られているが、それより上位の中枢の関与に関しては研究条件により様々な報告がある。これまでの報告は、排尿途中や最大尿意(膀胱内に尿が多量にたまり、非常に強い尿意を感じる時)での脳の賦活部位を検討しているものがほとんどである。排尿時や最大尿意の時には、尿を我慢することの苦痛・不快感や排尿を我慢するための骨盤筋群の収縮など本来の尿意とは異なる感覚を検出している可能性がある。正確な尿意がわかれば、その対極として尿意の異常、尿意切迫感を理解する助けとなる可能性があると考えられる。また過活動膀胱に関係する中枢神経の部位が明らかになれば、その部位に選択的に作用し、過活動膀胱を改善させる薬物の開発が可能となる。我々は、過活動膀胱に関係する中枢神経の部位を明らかにし、その情報をもとに過活動膀胱の診療体系(診断法、治療法)を確立することを本研究の目的としている。 今年度は正確な尿意を解析することを目的とした。具体的にはボランティアの成人男性6人に対して膀胱容量測走用に持続尿量モニターを下腹部に装着し尿量を測定した。排尿のために陰茎に外付けのコンドーム型集尿器を装着し臥位で排尿可能とさせ、頭部が検査中に動かないようにテープで頭部を固定した。腕より点滴を行い、排尿後の尿意を感じていない時点と初期尿意の時点で、放射性物質を注入し大脳の血流の状態の変化をPETで解析した。
|