本研究の目的は、悪性度の高い前立腺癌に特異的な遺伝子のプロモーター領域のメチル化を同定し、尿または生検洗浄液をサンプルとして、術前に前立腺全摘標本における悪性度の予測を可能とする新規バイオマーカーを開発することである。 前立腺全摘標本より悪性度の高い癌病変と低い癌病変をlasermicrodissection法を用いて切除し、cDNA microarrayを用いてRNAの発現レベルを比較検討したこれまでの研究結果より、悪性度の低い病変と比べ、高い病変で発現が1/2以下に低下していた遺伝子は280存在した。これらの遺伝子群より、悪性度の高い前立腺癌において高頻度にプロモーター領域のメチル化を認める遺伝子の選出を行った。まず、遺伝子のプロモーター領域にCpGislandsが存在する遺伝子を抽出し、ヒト前立腺癌のcelllinesにおけるメチル化の有無を調べた。メチル化の同定はMethylationspecificPCR法を用いて行った。その後、臨床検体を用いて前立腺癌におけるメチル化の有無を同定した。 現在、約半数の遺伝子に関して検討を行ったが、現時点で悪性度に特異的な遺伝子の同定はできていない。来年度は、残りの遺伝子群に関して検討を進める。また、単独の遺伝子で悪性度の予測ができない場合でも、複数の遺伝子組み合わせにより、予測が可能であるか検討する。 前立腺全摘除術を施行した症例の、生検洗浄液および術前尿検体の収集を行っている。上記の作業による候補遺伝子の選出が終了後、これらの検体における候補遺伝子のメチル化結果を全摘標本の悪性度と比較し、前立腺癌の悪性度に関する新規バイオマーカーを同定する。
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