研究概要 |
本研究の目的は、精巣局所でのparacrine/autocrine機構の制御因子の一つとしてNOに注目し、IL1βによるセルトリ細胞の機能調節機構を解明することにより、造精機能障害に対する治療法確立を目指すことである。in vitroでの検討を行うため、18目齢のラットよりセルトリ細胞を分離し、無血清培養液で培養を行った。セルトリ細胞に各種ホルモン(FSH,hCG)、cAMP inducer(Forskolin)やサイトカイン(IL-1β)の刺激により、細胞から産生されるNO量(培養上清中のNitrite+Nitrate)をGriess法にて測定した。セルトリ細胞においてNO増加を引き起こしたGrowth factorおよびサイトカイン刺激後の、iNOS,eNOSの各細胞内の局在を明らかにするため、それぞれの抗体を用いて蛍光染色を行った。IL-1β刺激によりNO濃度が6時間以内に増加を示したが、これらのNO濃度増加はJNK阻害剤であるSP600125添加により阻害された。またIL-1β刺激によりセルトリ細胞内のiNOS蛋白、mRNA量は有意に増加し、この増加はSP600125の添加により有意に阻害された。セルトリ細胞においてIL-1βはJNK経路を活性化し、NO濃度を上昇させる。セルトリ細胞におけるサイトカイン制御機構の解明は将来的に精子形球障害の治療に貴重な情報を与えるととが期待される。さらに今後は精細胞を分離培養し、セルトリ細胞と精細胞との共培養により、精細胞がマルトリ細胞から受けるparacrine effectに関しても同定しきたいと考えている。
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