メタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)を産生するグラム陰性桿菌では、薬剤耐性遺伝子がプラスミド上にコードされていることが多く、プラスミドが菌株・菌種間を伝達することにより、薬剤耐性遺伝子が拡散する。従って、伝達性プラスミドを保有する日和見感染菌については、院勾感染対策上の重大な問題として対応すべきである。 平成19年度は、MBL産生緑膿菌のバイオフィルム形成能と耐性遺伝子の伝達性を検討するとともに、パルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE法)による遺伝子解析を行った。 2001年〜2006年の6年間に分離されたMBL産生緑膿菌143株(尿:85株、喀痰:12株、便:10株、膿:8株、血液:6株、その他:22株)を対象とした。バイオフィルム形成能をOD_570値により3群に分類すると、高度形成群OD_570≧1;34株(23.8%)、中等度形成群1>OD_570≧0.5;49株(34.2%)、低度形成群0.5>OD_<570>≧0;60株(42.0%)であった。高度・中等度形成群計83株中、尿由来株は61株(73.5%)であり、他の材料別由来株に比して高いバイオフィルム形成能を示す株が多く認められた。また、対象としたMBL産生緑膿菌全株のバイオフィルム形成能は、岡山大学泌尿器科で1993年〜2005年に分離された尿路感染症由来MBL非産生緑膿菌146株に比して有意に高かった。バイオフィルム高度形成群34株のPFGE解析を行った結果、類似株(2組)・同一株(1組)を認め、交差感染の可能性が示唆された。伝達性を検討したIMP-1型遺伝子保有15株の全株において耐性遺伝子が伝達しており、その伝達頻度は10^<-3>〜10^<-8>であった。
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