研究概要 |
1)融合蛋白発現ベクターの作成 マウス精巣のcDNAライブラリーから既知のプライマーを用いて、PCR法によりKL2遺伝子を増幅し、EYFPおよびEGFPベクターにサブクローニングして融合蛋白発現ベクターを構築した。遺伝子導入時の条件設定のため、マウス精巣にエレクトロポレーション法によりEYFPおよびEGFPベクターを導入して、EYFP蛋白およびEGFP蛋白の発現につき検討を行ない、あらかじめ最適な条件を決定しておいた。目的とするKL2とEYFPまたはEGFPとの融合蛋白が正しく発現されることを確かめるため、哺乳類由来の細胞であるHEK293細胞に燐酸カルシウムを用いて、前述の融合蛋白発現ベクターを遺伝子導入して48時間培養した。これらの細胞から、ウェスタンブロット法により合成された蛋白の検出を行い、予想される分子量と一致することを確認しておいた。 2)マウス精巣への遺伝子導入 in vivoでの導入条件の決定のため、5週齢のICRマウスを用いて、3μg/mlに調整したKL2-EYFPまたはKL2-EGFPベクター溶液を精巣網から逆行性に注入した後に50V50msecで単回の電気刺激を行い、一定の期間の後(20日, 40日, 60日)に融合蛋白の発現を観察した。主にセルトリ細胞と精細胞に融合蛋白の発現が見られ、明らかな造精機能障害は認められなかった。また、この蛋白の発現は遺伝子導入後少なくとも8週間にわたり持続することも確認できた。この条件下では精巣上体精子の中に、KL2とEYFPまたはEGFPとの融合蛋白を発現する精子がおおよそ10%の割合で認められた。これらの精子の回収を試みたが、生存精子はわずかな数しか得られず、マウス卵とのIVFは成功しなかった。
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