研究課題
1. ヒト停留精巣組織で特異的発現する遺伝子群の探索前年度までの研究成果により、Subtraction法によって停留精巣組織で高発現する遺伝子として、TPT1・EEF1A1・NuMA1遺伝子を同定した。また低発現する遺伝子として、CLU遺伝子を同定した。これらのタンパク質発現について免疫染色による詳細な組織学的検討を行ったところ、EEF1A1およびTPT1遺伝子は精子形成細胞に発現しており、NuMA1遺伝子は精子形成細胞・セルトリ細胞に発現することを明らかとした。2. 停留精巣特異的発現遺伝子と、病態との関連性についてヒト停留精巣組織で高発現する3遺伝子の機能として、細胞分化・増殖に関わることは既に報告されているが、成熟精巣にも発現し、精子形成にも何らかの働きを持っことは今回の研究で初めて明らかとなった。EEF1A1遺伝子と高い相同性を持つCCS-3遺伝子は、精巣幹細胞の自己複製・維持に必須であるPLZF遺伝子と結合し核内移行を抑制することが報告されている。このことから、EEF1A1遺伝子はPLZF遺伝子を介して精原細胞の分化過程に関わっており、その分化状態を反映するマーカーとなる可能性が示唆される。そこで、実際に私達の施設で手術を行った症例(86例、104精巣)について各遺伝子発現量と治療前の精巣位置について検討を行ったところ、EEF1A1遺伝子発現は精巣の位置が高くなるに従い上昇しており、腹腔内精巣で最も高発現していた(p<0.005)。このことから、精巣の位置に従って精巣幹細胞の状態が異なり、造精機能へ影響を及ぼすものと考えられた。こうした遺伝子発現量によって精巣幹細胞の状態を予測することができれば、症例に応じた経過観察や早期の治療介入など、将来の造精機能障害に対して幅広い対応が可能となると考えられた。
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The Journal of Urology 181
ページ: 1330-1337
Urology 74
ページ: 571-578
Urology [Epub ahead of print]