尿路結石は多段階で形成され、オステオポンチンは結石形成時に腎尿細管で発現し、結石形成に重要であると考えられている。オステオポンチンはアミノ酸配列から、情報伝達のリガンドとして作用するRGD部位、カルシウム結合部位などの機能部位が知られ、それぞれが蛋白の機能に重要な役割を担っていると考えられる。本研究では尿路結石形成の主要遺伝子であるOPNの機能をRGD配列、カルシウム結合部位など各機能部位を欠失させた、dominant negativeトランスジェニックマウスを作成し、各部位の機能解析を行った。OPN-KOマウスと正常OPN、RGD配列をRGEに変換したOPN、カルシウム結合部位を欠損したOPNを発現するトランスジェニックマウスを作成した。Wild typeマウスでは蓚酸刺激や前駆物質投与により、尿細管細胞でOPNが強く発現するため、変異OPNトランスジェニックマウスでは、導入した変異OPNの機能を解析することが困難である。このため、OPN-KOマウスと変異OPNトランスジェニックマウスを交配し、wild type由来のOPN発現が消失し、トランスジェニックマウス由来のそれぞれのOPNを発現する遺伝子組み換えマウスを作成し、繁殖を行った。尿路結石モデルマウスとしてglyoxalate 100mg/Kgを腹腔内投与し、腎臓を摘出した。摘出した腎臓の結石形成を調べるとともに、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。偏光顕微鏡、蓚酸カルシウム染色でRGEトランスジェニックマウスでは結石数が少なく、カルシウム結合部位欠失トランスジェニックマウスでは、結石が成長しない結果が得られた。走査型電子顕微鏡では、カルシウム結合部位欠損トランスジェニックマウスではノックアウトマウス同様に結石が砂状で成長しないものの、RGEトランスジェニックマウスでは結石数が少ないものの、成長がみられた。OPNのRGD配列は結石形成の初期過程に、カルシウム結合部位は結石の成長に重要であることが示唆された。
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