前立腺癌の発生、進展に影響を与える遺伝子の発現調節の機序としてmicroRNA (miRNAs)に焦点をしぼり、1)前立腺癌において特異的に発現が亢進もしくは低下するmiRNAsを同定すること、2)それらのmiRNAsの発現を前立腺癌細胞に高発現させる、もしくはtargetingによってmiRNAsの発現を抑制することにより、miRNAsの前立腺癌細胞における機能(細胞増殖など)を検討すること、3)miRNAsの標的遺伝子を同定することを目的として実験を行った。まず、本年度は、前立腺癌において細胞増殖またはアポトーシス誘導に関連するmiRNAsを同定する目的で実験を行った。過去の文献を参考にして、約20種類のmiRNAsを選び、前立腺癌細胞株LNCaPおよびC4-2を用いてmiRNAsを遺伝子導入した。それにより細胞増殖が抑制されたものの中から、target geneが既知であるmiR15a、miR16-1を選び、前立腺癌におけるこれらのmiRNAの機能を解析した。miRNAの導入効率は80%以上であった。 miR15a、miRl6-1の遺伝子は13q14.3に存在し、標的遺伝子BCL-2の発現を抑制することが知られている。B細胞白血病などではmiR15a、miRl6-1の発現が低下し、その結果、BCL-2の発現が亢進することが報告されている。miR15a、miR16-1をLNCaPおよびC4-2に遺伝子導入後、24時間後にRNAと蛋白を抽出し、BCL-2の発現をRT-PCRおよびWestern blotにて検討したところ、BCL-2の発現は80%以下に低下した。また、MTT assayにて、増殖の抑制を認めた。来年度はアポトーシスの誘導能をみるために細胞周期を解析する。さらに、前立腺癌細胞株PC3、DU145においても同様の効果が認められるかどうか検討し、さらにヒトの前立腺癌における発現の同定を行う予定である。
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