研究概要 |
マイクロRNA(micro RNA)であるmiR-15a/16-1は13q14遺伝子上でclusterをなしており、白血病患者においてこのゲノム領域の欠失が報告され、さらにmiR-15a/16-1は, 抗アポトーシス遺伝子ある8CL2を標的としている事が判明した。近年、前立腺癌においてもBCL2を介した細胞増殖の制御を行っていると報告がなされ、miR-15a/16-1を用いた治療の可能性が示唆されている。今回我々は、miR-15aおよびmiR-6-1の前立腺における細胞死に対する機能を知るために、前立腺生検の標本および前立腺癌細胞株におけるmiR-15aおよびmiR-16-1の発現が低下していることを確認し、miR-15aおよびmiR-16-1をそれらの細胞株に核酸導入し、細胞の増殖能、細胞死の増加の有無を調べ以下の結果を得た。 1. LNCaP、C4-2においてはmiR-15a/16-1を核酸導入することにより細胞増殖の抑制、細胞死の増加を認めたが、PC3細胞、DU145細胞においては認めなかった。 2. miR-15a/16-1の導入によりすべての細胞株において、細胞周期の停止(G1 arrest)を認め、細胞増殖に影響を与えることが示唆された。 3. IniR-15a/16-1の導入によりBCL2をはじめとした、さまざまな遺伝子の発現が抑制された。miR-15a/16-1単独では抗腫瘍効果が低いものの、miR-15a/16-1が前立腺癌の治療として有効である可能性が示唆された。しかし、一部のホルモン非依存癌では無効であり、今後、ホルモン非依存性の前立腺癌の抗腫瘍効果を示すmiRNAを同定することが重要と考えられた。
|