【研究の目的】 精上皮におけるミトコンドリアβ酸化系の役割を明らかにする。 【研究の成果】 研究開始当初、精細管に脂肪酸β酸化系はほとんどない、あるいは極端に少ないと思われた。しかしその後の検討の結果、精上皮ではミトコンドリアおよびペルオキシゾームの脂肪酸β酸化系がSertoli細胞にのみ存在し、一方で精子発生細胞(精祖細胞・精母細胞・精子)には存在しないという中間的結論を得た。現在、Sertoli細胞のミトコンドリア脂肪酸β酸化系が存在するという内容で論文を執筆中である。 【現在の実験】 分離した精細管、単離したSertoli細胞および精子発生細胞において、Western blot法、蛍光抗体法、免疫電顕法、およびDNAマイクロアレイ法により、脂肪酸β酸化系を含む栄養代謝関連系(脂肪酸輸送系、脂肪酸分解系、ケトン体代謝系、解糖系など)の遺伝子発現量および蛋白量を計測・比較し、その存在について検討している。 【研究の意義】 従来、精上皮における栄養代謝は、解糖系とそれに続く乳酸・ピルビン酸代謝によると考えられてきた。しかし本研究により、脂肪酸β酸化系も関与することが示唆された。脂肪酸β酸化系が一般的な栄養代謝系であるにもかかわらず、精上皮ではSertoli細胞にのみ存在し精子発生細胞では欠落している意義について、Sertoli細胞と精子発生細胞との相互作用の観点から考える必要がある。培養Sertoli細胞や生殖幹細胞などin vitroにおける脂肪酸β酸化系の存在を調べると共に、精子発生におけるSertoli細胞での脂肪酸β酸化系の役割を解析する必要がある。
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