研究概要 |
【具体的内容】前年度、不妊症精子97検体中、24検体(24.7%)にインプリント遺伝子のメチル化に異常が確認された。この精子の異常が、受精以降伝達され先天性疾患を起こす原因となるのかART後の流産検体を用い解析した。●ART後の流産検体の登録 : 不妊治療後の流産絨毛78検体と患者情報を登録しDNAを抽出した。●インプリント遺伝子のDNAメチル化解析 : 卵子型インプリント(LIT1, ZAC, PEG1, PEG3, SNRPN)と精子型インプリント(H19, GTL2)の7種類について、Bisulphite(BS)-PCR法でDNAメチル化について解析した。メチル化の定量はCOBRA法とシークエンス法で行った。コントロールには精子DNAを用いた。●流産におけるメチル化解析の結果 : 78検体中、17検体(21.8%)でメチル化に異常が確認された。遺伝子別にみると、H19 : 5例,GTL2 : 2例(以上精子型)LIT1 : 4例, ZAC : 1例, PEGI : 1例, PEG3 : 1例, SNRPN : 0例(以上卵子型)であった。そのうち、精子、卵子両方に異常を持っているのは25.0%(6/24)であった。また、精子濃度との関係を調べてみたところ、5×10^6/ml以下(高度乏精子症)の群で53%(8/15)が、異常を示すことが確認され、不妊症精子同様に、ART後の流産検体でも精子性状との関連性が示された。今後さらに精液所見との関連について詳細に検討する。【意義】IVF-ETやICSIなどに用いる不妊症精子および流産産物のインプリント遺伝子のメチル化の解析を行い、異常の頻度、程度、影響を受けやすい遺伝子の有無に関する検討を行う。また、ART治療後の出生児についての後方的分析はインプリント病の現状の把握となり社会に及ぼす意義は大きい。【重要性】また本成果は今後ARTを用いた不妊治療、とくに男性精子の安全性や危険性について評価され、次世代の子供の疾患を予防する点で非常に重要である。
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