研究課題
【具体的内容】本研究では、ART(生殖補助医療)とインプリント異常の関連を明らかにするため、以下の3項目を明らかにした。1)男性不妊(乏精子症を含む)精子のDNAメチル化解析2)不妊治療後の流産検体のメチル化解析3)ART出生児の出生・発育調査【結果】1)不妊症精子におけるメチル化インプリントの解析:不妊症精子97検体中、24検体(24.7%)にインプリント遺伝子のメチル化に異常が確認された(精子14.4%、卵子20.6%;両方45.8%)。また、異常の頻度は精液所見と相関し、重症乏精子症の60%は異常を呈した。2)ART後の流産におけるメチル化解析:78検体中、17検体(21.8%)でメチル化に異常が確認された。精子、卵子両方に異常を持っているのは25.0%(6/24)であった。乏精子症で53%(8/15)が、異常を示すことが確認され、不妊症精子同様に、ART後の流産検体でも精子性状との関連性が示された。3)ART出生児の発育・発達の関する後方的分析:ART出生児の両親817名のアンケート調査を集計した。特徴として1)低出生体重児が多い傾向が見られたが身体的な発育は生後数ヶ月で回復していた。2)ICSI児で、探索と社会指数が低い児が多く認められたが親の関与が強いことも影響する。3)ART児の奇形率は3.1%で有意差がない。【意義】ARTとインプリント異常の関連性が予想され、社会的な影響も考慮しなければならない。このARTによるリスクは、患者が一般の集団とは異なる特殊な集団であるため、その評価は単純ではない。精度の高い評価には、正確な診断と細分化した解析が重要で、その結果を裏付ける科学的根拠が必要である。【重要性】今後ARTを用いた不妊治療、とくに男性精子の安全性や危険性について評価され、次世代の子供の疾患を予防する点で非常に重要である。
すべて 2009
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European Journal of Human Genetics 12
ページ: 1582-1591
Cancer Science 101
ページ: 241-249