本研究では、がん免疫療法(WT1ペプチドワクチン療法)施行前後で、樹状細胞(Dendritic cells; DC)及び単球系細胞の動態やサイトカイン産生バランスを詳細に検討するとともに、その結果得られたサイトカイン等の動態がWT1特異的細胞障害性T細胞の誘導へ与える影響を検討することを目的としている。本年度は以下のような結果が得られた。 1.末梢血中単球系細胞の細胞表面マーカーの動態 ワクチン投与前に比べ投与1ヶ月後においてCD80およびCD83は低下する傾向が認められたが、ワクチン投与2ヶ月後、3ヶ月後においては上昇する傾向がみられた。HLA-DRはワクチン投与1〜2ヶ月後において低下する傾向が認められたが、投与3ヶ月目においては上昇する傾向がみられた。 2.末梢血中樹状細胞(DC)数の動態 ワクチン投与2ヶ月後において、plasmacytoid DCは増加する傾向が認められた。特筆すべき点として、ワクチン投与前に末梢血中に検出されなかったmyeloid DCが3ヶ月後において検出される症例があった。 以上の結果から、WT1ペプチドワクチン投与によってDCが賦活化・増殖し、治療効果が得られるには、ワクチン投与から2〜3ヶ月の期間を要する可能性が示唆された。また、HLA-DRは、ワクチン投与1〜2ヶ月目には低下し3ヶ月後に上昇する傾向が認められたことから、現在開発中のMHC-class II対応のWT1ペプチドの投与は、現在実施しているMHC-class I対応のWT1ペプチドと同時投与ではなく、タイムラグを設定する必要がある可能性が示唆された。
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