本研究では、がん免疫療法(WT1ペプチドワクチン療法)施行期間中の樹状細胞(単球系細胞)の動態や検討するとともに、その結果と臨床効果との関連について検討することを目的としている度は以下のような結果が得られた。 1. WT1ペプチドワクチン療法 2009年3月末までに婦人科悪性腫瘍患者12名を対象にWT1ペプチドワクチン療法を試行した。RECIST効果判定基準にて、完全奏功0例、部分奏功0例、病状安定3例、病状進行9例であった.臨床試験の脱落症例が3例おり、3ヶ月間のワクチン投与の完遂率は75%であった。なお、ワクチン投与による重篤な副作用は認められなかった。 2. 末梢血中樹状細胞数の動態 12名のうち7名に関して末梢血中のミエロイド系樹状細胞の数をフローサイトメトリーにて測定した。臨床効果との関連を調べたところ、病状進行症例では末梢血中にミエロイド系樹状細胞は殆ど認められず、病状安定症例では健常人とほぼ同等のミエロイド系樹状細胞を末梢血中に認めた。このことから、WT1ペプチドワクチン療法の臨床効果の予測因子として末梢血中のミエロイド系樹状細胞の数が関与している可能性が強く示唆された。 以上の結果から、WT1ペプチドワクチン療法の臨床効果を高めるためには、患者の骨髄機能、特に細胞傷害性Tリンパ球の誘導に不可欠なミエロイド系樹状細胞の質的・量的改善が必要であることが推測される。そこで、今回得られた結果を踏まえ、現在、ミエロイド系樹状細胞を活性化するアジュバントを併用したペプチドワクチン療法を計画している。
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