これまでに構築した不死化子宮内膜腺上皮細胞を、エストロゲンおよびエストロゲン代謝産物である20H-E2、40H-E2刺激下に長期培養を行った。培養細胞の形態、growth curveに変化は認められなかった。軟寒天培地コロニー形成能、ヌードマウス腫瘍形成能、浸潤能などの表現形に変化を認めなかった。培養細胞より16 Population Doubling(PD)毎にDNAを採取し、子宮内膜癌に多く報告されているがん抑制遺伝子PTEN、癌遺伝子KRASのhot spotにおける変異解析を行ったが、160PDの時点までに遺伝子変異は誘発されなかった。現時点ではエストロゲンおよびその代謝産物によるDepurinating aductによる表現形の変化、ゲノム異常の誘発には至っておらず、引き続き培養継続しているところである。また、不死化子宮内膜腺上皮細胞に対し活性型変異KRASをレトロウイルス導入することにより染色体正常でかつTransformしたin vitro子宮内膜癌化モデルの構築に成功した。このモデルはタイプ1子宮内膜癌の臨床的特長をin vitroで再現した世界初のモデルで、その解析をすることで子宮内膜癌の発癌メカニズムの解明、治療薬の効果発現機序の解析、治療抵抗性のメカニズム解析などに有用なツールとして重要である。実際、KRASの下流で活性化される転写因子NF k Bが癌形質維持の責任因子である可能性が示されつつあり、解析を継続しているところである。不死化子宮内膜腺上皮細胞に活性型AKTを導入したところ、軟寒天培地コロニー形成は獲得したが、完全なTransformationには至らなかった。この結果はさらに他の因子がTransformationに必要であることを示している。この候補因子の抽出も解明すべき課題として重要であると考えている。
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