子宮内膜から単離した上皮細胞にHuman Pappilloma Virus(HPV)16 E6/E7及びテロメレース触媒サブユニットであるhTERTをレトロウイルスベクター導入することで、長期培養可能な不死化細胞を樹立した。この不死化子宮内膜上皮細胞は軟寒天培地上でのコロニー形成能を有さず、ヌードマウスにおける腫瘍形成能も獲得していないことを確認した。この不死化子宮内膜上皮細胞に対しエストロゲンおよびエストロゲン代謝産物である4OH-E2、2OH-E2の各々を様々な濃度で暴露し、長期培養を行ったがコントロールに比してin vitro growth曲線に変化を認めなかった。長期暴露後の細胞を用いてsoft agar colony formation assayを行ったが、コントロール同様にコロニー形成を認めなかった。nude mice tumor formation assayにおいてコントロール同様に腫瘍形成を認めなかった。 子宮内膜不死化細胞に対して長期間エストロゲンおよびエストロゲン代謝産物刺激を加えた本研究においては、細胞の形質転換には至らなかった。しかし、Deurinating aductや活性酸素による微細なDNAダメージを評価する実験系を立ち上げれば、形質転換に至らずとも微細なDNAの変化を観測することができた可能性はあると思われる。本実験系は子宮内膜癌において高頻度に観測される癌遺伝子KRASや癌抑制遺伝子PTENの変異やmicrosattelite instabilityにおけるエストロゲンおよびエストロゲン代謝産物の関与を検出する系としても有用であると思われる。
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