研究概要 |
前年度までの試験的解析により、UGT1A1 *28,*6の遺伝子多型に絞って検討することとしたため、ひきつづき当院で婦人科癌に対する抗癌剤治療として塩酸イリノテカンの投与を受け外来通院中の患者より同意を得て採血、DNAを抽出し、UGT1A1遺伝子多型解析を続けた。OGT1A1 *28,*6の頻度解析結果は以下の通りであった。UGT1A1 *6ハプロタイプ頻度…16.7%、UGT1A1 28ハプロタイプ頻度…16.7%(全例ヘテロ接合体)。UGT1A1 *6へテロかつ*28へテロの全例でイリノテカンによる副作用と考えられるGrade4以上の強い好中球減少を認めた。これらのハロタイプ頻度は日本人で報告されている主に消化器癌・肺癌での検討と同様の結果であった。副作用の頻度と遺伝子多型についての相関について解析したが、6,*28を持つものでは副作用が強い傾向にあったが、有意差は認めなかった。婦人科癌では塩酸イリノテカンを主に再発・再燃治療で使用しているため、前治療の影響もありイリノテカン投与量が一定しないこと0卵巣明細胞腺癌でのイリノテカン・シスプラチン治療ではイリノテカン投与量が60mg/m^2と少ない〔肺小細胞癌では80mg/m^2が標準投与量〕ことが有意差を認めなかった一因と考えている。2009年4月にはイリノテカン投与時のUGT1A1 *28, *6遺伝子多型解析は保険診療として認められ、肺癌・消化器癌ではイリノテカン投与前や初回投与後の副作用発現時の検査として遺伝子多型解析は一般的となりつつある。今回の結果から、婦人科でもUGT1A1 *6,*28は予期しない重篤な副作用(特に好中球減少)と関連すると考えられた。今後、卵巣明細胞腺癌に対する塩酸イリノテカン治療開始前には保険診療内で本人の同意のもとUGT1A1 *6,*28の多型解析を行い、副作用との関連の情報を集積し、イリノテカン投与量(60mg/m^2)が適切かどうかも含めて検討していきたいと考えている。
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