研究概要 |
【目的】母体血漿中へ流入する胎盤由来mRNA(cell-free placental mRNA:cfp-mRNA)は、母体を通じて得られる胎盤の分子情報である。そこで、胎盤特異的ヒトcDNAマイクロアレイジーンチップ(胎盤特異的cDNAアレイ)を作成し、母体血漿中cfp-mRNAを用いた網羅的解析の可能性について検討した。また、cfp-mRNA流入量と双胎間輸血症候群(TTTS)との関連について検討した。 【方法】本研究は本学倫理委員会の承認を得て、説明と同意のもとに行われた。胎盤組織と末梢血を一組とし、妊娠初期、中期および末期の各時期より2組ずつ、計6組を解析に用いた。まずGeneChip Human Genome U133 Plus2.0 Arrayで網羅的スクリーニングをおこない、血液細胞と比較して胎盤で2,500倍以上の信号強度を認める遺伝子を同定した。ついで、各遺伝子に特異的な塩基配列を同定し、胎盤特異的cDNAアレイを作成した。12例の母体血漿中より抽出したcfp-mRNAを蛍光標識し、胎盤特異的cDNAアレイで信号強度を検出可能か否か検討した。また、一絨毛膜双胎例を対象としてcfp-mRNA流入量がその後のTTTS発症の有無と関連があるのか否か検討した。 【成績】50個の胎盤特異的遺伝子が同定され、胎盤特異的cDNAアレイにより12例すべての母体血漿中より抽出したcfp-mRNAを安定した信号強度で検出することが可能であった。TTTSを発症するものでは、それを発症しないものに比して、発症前からすでに母体血漿中へのcfp-mRNA流入量の有意な上昇(hPL、PSG2およびPSG3)あるいは減少(Syncytin、Syncytin2およびADAM12)を認めた。 【結論】 母体血漿中cfp-mRNAをターゲットにしたcDNAマイクロアレイ解析に成功した。また、双胎間輸血症候群の原因は発症前にすでに存在し、母体血漿中に流入するcfp-mRMAの定量はTTTS予測の分子マーカーになりうると考えられた。
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