研究概要 |
減数分裂期の染色体動態の解明は、不妊の原因究明や胎児の染色体異常において重要な課題であり、哺乳動物を対象とした研究は、診断及び治療への発展が期待できると考えられる。減数分裂の培養細胞系が確立されていない現状では、マウス個体での発現制御系の確立及び解析が最も有効な方法である。我々は相同組換えに関係するRad51遺伝子の欠損マウスは胚性致死になることを示し、また、減数分裂特異的に発現するDmc1遺伝子の欠損は、相同染色体の対合不全のため、両性不妊となることを明らかにしてきた。さらに、減数分裂の染色体分配に関与するシュゴシン遺伝子のノックアウトマウスを作製したところ、ホモのノックアウトマウスは胚性致死であった。本研究では、染色体の異常と不妊の関連を明らかにするために、マウスについて、減数分裂における染色体の対合・組換え・分配に関連するヒストンH2AX, Dmc1, Rad51, Sgo1, Sgo2遺伝子の連携を解析した。その結果、Sgo1, Sgo2遺伝子は胸腺・脾臓・小腸・子宮・卵巣・精巣などに発現し、両遺伝子は、細胞の増殖に関連していうことが明らかとなった。さらに、その発現量は、Sgo2遺伝子が精巣において極端に高いなど特徴が見られたことから、両遺伝子は別の役割を果たし連携していると考えられた。また、ヒストンH2AX遺伝子は生殖細胞において性染色体の対合に関与すると考えられるため、コンディショナルノックアウトマウスを作製し、卵子と精子における染色体の異常を解析中である。
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