研究概要 |
卵巣癌の転移形式で最も高頻度にみられるのは腹膜播種転移であり,それゆえに卵巣癌の予後改善には腹膜播種の制御が重要である。これまでに卵巣癌腹膜播種における接着因子の働きは,十分解明されているとは言えない。特に接着因子の一つであるTight Junction (TJ)を形成するTJ関連蛋白質め卵巣癌腹膜播種における働きは,これまでほとんど検討されていない。本研究ではTJ関連因子であるclaudinが,卵巣癌の転移形成にどのように関与しているか,特に卵巣癌において最も頻度の高い転移形式である腹膜播種における関連を明らかにし,その臨床的応用について検討する。臨床進行期III期以上の卵巣癌摘出組織を用い,腫瘍原発巣および腹膜播種巣におけるclaudinの発現を免疫組織学的に検討した。具体的にはホルマリン固定した卵巣癌摘出標本18症例に対して,その原発巣および腹膜播種巣それぞれに抗ヒトclaudin抗体を用いて免疫染色を行った。その後,染色発現強度を検討し,原発巣および腹膜播種巣間でのclaudin発現の相違を調べた。その結果,claudinの発現は予後や組織型などの臨床病理学的因子との明らかな関連は認めなかったものの,卵巣癌の原発巣および腹膜播種巣間で発現強度の相違が認められた。このことから,卵巣癌腹膜播種の過程においてclaudinが何らかの役割を果たしている可能性が示唆された。現時点では症例数の問題もあり,有意な差は認められなかったが,今後さらに症例数を増やして検討する予定である。また,claudinと腹膜播種の関連についてさらに詳細に検討するために,今後卵巣癌細胞株を用いて,そのclaudin発現をsiRNAなどにて抑制し,その結果転移能に何らかの変化が認められるか検討する予定である。
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