卵巣癌の転移形式で最も高頻度にみられるのは腹膜播種転移であり、それゆえに卵巣癌の予後改善には腹膜播種の制御が重要である。これまでに卵巣癌腹膜播種における接着因子の働きは、十分解明されているとは言えない。特に接着因子の一つであるTight Junction(TJ)を形成するTJ関連蛋白質の卵巣癌腹膜播種における働きは、これまでほとんど検討されていない。本研究ではTJ関連因子であるclaudinが、卵巣癌の転移形成にどのように関与しているか、特に卵巣癌において最も頻度の高い転移形式である腹膜播種における関連を明らかにし、その臨床的応用について検討する。臨床進行期III期以上の卵巣癌摘出組織を用い、腫瘍原発巣および腹膜播種巣におけるclaudin-4の発現を免疫組織学的に検討した。その結果、claudin-4の発現は予後や組織型などの臨床病理学的因子との明らかな関連は認めなかったものの、卵巣癌の原発巣および腹膜播種巣間で発現強度の相違が認められた。このことから、卵巣癌腹膜播種の過程においてclaudinが何らかの役割を果たしている可能性が示唆されたが、明らかな有意差は認められなかった。また、claudinと卵巣癌転移の関連についてさらに詳細に検討するために、卵巣癌細胞株のclaudin-4発現をsiRNAにて抑制したところ、その遊走能が亢進する傾向がみられた。さらにclaudin-4抑制に伴って接着因子であるE-cadherinの発現も減弱する傾向がみられた。以上のように、claudinは卵巣癌転移に何らかの重要な役割を担っている可能性が示唆されたが、その詳細なメカニズムに関してはさらなる検討が必要であると考えられる。
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