研究課題
着床関連タンパクglycodein(Gd)(Uchida et.al. Hum Reprod 2007)は、子宮内膜症病変で高発現していることが知られている(Seppala M et.al. Endocr Rev, 2002)。一方で、子宮内膜腺癌では、Gdの発現量と正の相関をもって予後が良好であることが知られている。(Than GN et.al. Arch Gynecol Obstet, 1988)。増殖性疾患である子宮内膜症および子宮内膜癌におけるGdの機能を明らかとするために子宮内膜腺癌細胞株Ishikawaを用いて、Gdの細胞増殖に及ぼす影響を解析した。EGFPタグを付したGdを遺伝子導入し、フローサイトメーターでGd強制発現細胞を選別し、増殖速度、増殖MTSアッセイ、FACSによる細胞周期解析および、細胞周期調節因子であるp16、p21、p27の発現をRT-PCR法で検討した。その結果、Ishikawa細胞でのGd強制発現により、(1) 細胞増殖は顕著に抑制され、(2) 細胞周期G1分画の増加、G2/M分画、S分画の有意な減少が起こり、(3) 細胞周期調節因子p16、p21、p27の発現上昇を認めた。これらの結果から、子宮内膜腺上皮細胞において、Gdの発現は、p16、p21、p27の発現を何らかの機序で増加させることで、細胞周期G1/Sチェックポイントでの細胞回転停止させ、結果細胞増殖を顕著に抑制しうることが明らかになった。これらの一連の結果はGd高発現と子宮内膜癌の良好な予後報告を分子機序的に支持しており、子宮内膜症を含めた子宮内膜腺上皮の増殖性疾患に対する、Gdを分子標的とする新しい治療戦略の基盤となりえるものである。
すべて 2008
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Molecular human reproduction 14
ページ: 17-22
日本生殖内分泌学会雑誌 13
ページ: 43-47
ページ: 25-29