本研究の目的はエストロゲン依存性ATF3発現による血管新生の可能性の追求である。 エストロゲン依存的ATF3発現上昇に関しては、現在検討中であるが、乳癌の治療薬として代表的な薬剤であるドキソルビシン依存的において、以下の知見が得られた。 1)ドキソルビシン依存性ATF3発現の確認より確認した。また、この時ATF3発現上昇にともない、受容体チロシンキナーゼEphA1の発現が上昇することもウエスタンブロット解析により確認した。 2)ドキソルビシン依存性血管新生の関与 内皮細胞株NP31はATF3依存的に血管新生を起こすことを、マトリゲルを用いたin vitro血管新生法による解析によりすでに報告している。今回、ドキソルビシン存在下でATF3依存的血管新生が起こることを同解析により明らかにした。 3)EphA1のプロモータ解析 EphA1の遺伝子上流にはATF3依存的に発現が上昇する配列が存在することをルシフェラーゼによるプロモータ解析により明らかにした。 これらのことから、VEGF非依存性血管新生は、内皮細胞のATF3発現上昇とATF3依存的なEphA1の発現誘導が起こり、EphA1が腫瘍の血管新生を亢進させていることをドキソルビシン存在下により確認した。ドキソルビシンは乳癌の治療薬として代表的な薬剤であるが、トキソルビシンに対する自然あるいは獲得耐性が乳癌化学療法の大きな障害になっている。本年度の研究により、ドキソルビシン耐性乳癌はVEGF非依存性の血管新生を行っている可能性が示唆された。
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