本研究の目的はエストロゲン依存性ATF3発現による血管新生と転移の可能性の追求である。 1) 乳癌の治療薬として代表的な薬剤であるドキソルビシン依存的において、以下の知見が得られた。 VEGF非依存性血管新生は、内皮細胞のATF3発現上昇とATF3依存的なEphA1の発現誘導が起こり、EphA1が腫瘍の血管新生を亢進させていることをドキソルビシン存在下により確認した。ドキソルビシンは乳癌の治療薬として代表的な薬剤であるが、ドキソルビシンに対する自然あるいは獲得耐性が乳癌化学療法の大きな障害になっている。本研究により、ドキソルビシン耐性乳癌はVEGF非依存性の血管新生を行っている可能性が示唆された(J Biol Chem. 2008 May 9 ; 283(19) : 13148-55.)。 2) EphA1分子が活性化された際の転移の可能性において、以下の知見が得られた。 EphA1分子の細胞内部位は、EphA1のSAMドメインと、インテグリン結合キナーゼ(ILK)とアンキリンリピートを介してEphA1のリガンドに結合によるリン酸化に関係なく結合するが、EphA1のリガンドに結合によるリン酸化によって、細胞の接着性が軟化し、細胞運動も低下する。この機序にはEphA1がリガンドと結合することにより、細胞接着に深く関わるRhoAの過剰発現とRaclの発現低下することにより生じるにものであることが示された。本年度の研究より、EphA1がリガンドと結合することによって癌転移が抑制されることを示した(J cell Sci. 2009 Jan 15 ; 122(Pt 2) : 243-55.)。
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