本研究において、われわれは細胞におけるDNA合成に重要な役割を持つthymidylate syntahse(TS)に対するsmall interfering RNA(siRNA)を頭頸部扁平上皮癌細胞であるTu167細胞及び唾液腺腺様嚢胞癌由来のACC3細胞に導入し、細胞増殖能への影響、及びアポトーシスに関与する分子への影響を検討した。siRNAは両細胞において有効にTSの発現を抑制し、有意にcell viabilityを低下させた。flow cytometryでの解析では、TS抑制がS期での細胞周期停止に関与していることがわかった。siRNAによるTS抑制の分子メカニズムを検討するため、cDNAマイクロアレイ及びウェスタンブロットを行ったところ、癌抑制遺伝子として知られているp21やpolyamine代謝に関与するspermidine/spermine N1-acetyltransferaseの発現上昇が認められ、さらにアポトーシスの指標である活性化型caspase-3の有意な発現上昇がsiRNAの導入により認められた。生体での効果を検討するため、ヌードマウスに腫瘍細胞を移植し、TSに対するsiRNAをアテロコラーゲンを用いて導入し、有意な腫瘍形成の抑制、アポトーシスの誘導が認められた。これらの結果より、TSに対するsiRNAが頭頸部癌の増殖抑制に大きく寄与し、臨床応用においても、有効性を示す可能性が示唆された。
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