昨年度までにCry j 1特異的Th2 cell lineを樹立できたので、引き続きsiRNAによるTh2サイトカイン抑制効果を検討している。実験系確立のために、比較的安定して増殖する癌細胞株を使用して癌細胞から産生されるサイトカイン(TGF-βやIL-6)をsiRNAにてノックダウンすることを試みているところである。 一方、昨年度から制御性T細胞のスギ花粉特異的アレルギー反応における役割について検討を始めた。すなわち、制御性T細胞にはnaturally occurring regulatory T cell(nT reg)とIL-10産生regulatory T cell(Tr1)の二つのタイプが存在するが、nTregを培養系から除去した条件でスギ特異的なT細胞応答がどのように変化するかを検討した。 健常人は、もともとスギ花粉に対してT細胞応答を示さないが、これはnTregを除去しても変化を示さなかった。一方、アレルギー性鼻炎患者はその一部がnTregを除去することにより増殖能及びサイトカイン産生能が増強を示した。これは、nTregがアレルギー性反応を抑制していることを示唆するが、アレルギー反応が変わらない患者も存在した。このように、nTregの除去によりアレルギー反応の増強するドナーとそうでないドナーが存在することがわかってきた。またnTreg除去によりIL-10の産生量の低下も認めていることより、nTregの中にはスギ特異的IL-10産生細胞が存在する可能性が示唆された。現在、もう一つのTr1についてもアレルギー患者の末梢血より分離、増殖を試みている。これら制御性T細胞の機能をsiRNAでノックダウンさせることについても今後検討する予定である。
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