研究概要 |
聴力像に特徴のある難聴において遺伝子の発現パターンと聴力像が、どのように関連性があるのかについて研究を進めている。本年度は高音障害型の感音難聴を来たす老人性難聴にスポットをあてて研究を進めた。老人性難聴のモデルマウスであるSAM(Senesence Accelerated Mouse)を実験動物とした。昨年度のマイクロアレイを用いた解析により、老人性難聴との関連が疑われた3つの遺伝子について、今年度はさらに詳細な検討を加えた。SAMには老化促進を示すSAMP1系統と、それに対するコントロールとして用いられ、老化促進を示さないSAMR1という系統がある。この2つの系統の8週齢と20週齢のそれぞれ4群の間で、この3つの遺伝子の発現量の変化をReal time PCRを用いて検証し結果を得た。現在この結果について考察を行なっている最中である。また、マウスにキシラジンとケタミンで全身麻酔を行なった後に、聴力をABR(Acoustic Brainstem Responses)を用いて評価した。トーンバーストの刺激で4, 8, 16, 32kHzの周波数で聴力検査を行った。20週齢のSAMはコントロールと比較すると、16KHzの高音域で聴力悪化を生じ始めていることを確認することができた。40週齢から急激な老人性難聴を示すと報告されているSAMP1であるが、20週齢という時期は老人性難聴の原因となる遺伝子発現がスタートする時期であることが示唆された。現在SAMP1、SAMR1の8週齢と20週齢の計4群を比較するために、内耳からRNA抽出して、エクソンアレイで網羅的に遺伝子発現を把握するとともに、レーザーマイクロダイセクションにより、部位を摘出しRNA抽出と発現量評価を行っている。
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