上気道慢性炎症疾患におけるTGFbeta1の繊維化や粘液産生に対する役割に焦点をあて、上気道のリモデリングのメカニズム及びその制御について検討するのが本研究のテーマであり、まず最初にヒト上皮細胞株を用いたin vitroの実験系を用いて、TGFbeta1のムチン遺伝子発現における影響を調べた。実験方法としては、ヒト上皮細胞株であるA549やHM 3細胞にMUC 5 AC遺伝子やMUC2遺伝子を導入した細胞、ならびにヒト鼻粘膜細胞を用いて、ルシフェラーゼアッセイ法ならびにPCR法を用いた。最初にTGFbeta1単独刺激でのムチン遺伝子発現の亢進がみられるかどうか調べたが、今回の結果からは有意な発現亢進は認められなかった。そこでIL-1betaとTGFbeta1の共刺激を行ったところ、ムチン遺伝子の一つであるMUC2遺伝子は相乗的に発現亢進することが判明した。しかしながらMUC 5 AC遺伝子に関しては当初の予想に反し、TGFbeta1により抑制される傾向が認められた。TGFbeta1はNF-kBを相乗的に活性化させることはすでに判明しており、MUC2遺伝子の発現はNF-kBを介した経路で増強されたと考えられたが、MUC5AC遺伝子発現は別の転写因子が大きく影響しているのではないかと推測された。今後はさらにコラーゲン遺伝子発現に対するTGFbeta1の影響を検討したが現時点では有意な増強作用は認められなかった。今後さらに条件をかけてコラーゲン遺伝子発現に対するTGFbeta1の影響を検討したいと考えている。これまでのところin vitroの実験で予想外の結果がでたため、ますスを用いた実験まで進めておらず、もうしばらくところin vitroの実験を重ねて、さらに本研究を発展させて行きたい。
|