発声関連磁場(vocalization-related cortical field; VRCF)計測条件について、正常被験者で検討を行った。条件の設定には様々な問題点があり、国内国外の研究者から貴重なアドバイスを頂戴し、下記の解決方法を得ることが出来た。 (1)トリガの設定について 加算平均を行うトリガに関して、当初は被験者の音声に対して閾値を設定し自動的にトリガを作成する試みを行ったが、閾値を低くすると雑音にも反応し、VRCFのみを加算平均することが出来なかった。逆に閾値を高くすると、発声のオンセットより20ms程度の遅延が生じることがわかった。そのため自動的なトリガの作成はVRCF測定中の目安としてのみ使用し、最終的なデータはオフラインで肉眼的に波形を選択し、加算平均することにより、解析可能な反応を得ることが出来ることが判明した。 (2)発声する音声について 発声する音声に関しては、母音であれば明らかな違いを認めなかった。しかしながら、単一の母音を連続して発声することは覚醒レベルの維持が困難であったため、5種類の日本語母音を順次発声することとした。複数の母音を使用しても、得られる波形は十分解析可能なものであることが判明した。 (3)反応の解析について 得られた加算平均波形に関しては、slow waveが混入する例を認めた。これはノイズを加えるためのイアートームと音声反応を捕らえるためのマイクとの二つの機械を脳磁場計測計の付近に設置していることと、発声に関連して歯牙充填剤などの磁性体が動くことの影響と考えられる。3Hz程度のhigh pass filterでこのslow waveは除去することが出来る。一方でhigh pass filterは潜時に影響し、運動準備反応などを除去することが知られている。そのため、評価に関しては波形の有無にX2乗検定を用いることが適当と考える。
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