研究概要 |
特定疾患のひとつであるメニエール病の病態は内リンパ水腫であるが、正常では内リンパ水腫が生じないように内リンパ系が調節されており、内リンパ嚢は内リンパ液の吸収をしていると考えられている。しかし、実際に内リンパ嚢がどのような働きをしているか、どのように調節されているか、その全貌はいまだ明らかになっていない。この内リンパ液の輸送能を制御することができれば、内リンパ水腫を呈するメニエール病などの根本的な治療となる可能性がある。そこで、内リンパ嚢における内リンパ液の吸収にかかわる制御因子を探し出し、その制御能を直接測定する実験系を構築した。制御因子として、まず、イオントランスポーターなかでも、Na^+,K^+-ATPase、Na^+-K^+-2Cl^-cotransporter、Na^+-Cl^-cotransporterに注目した。 まず、生きた組織における個々の細胞で、Na^+,K^+-ATPase活性を測定する方法を確立し、さらに、同じ標本での生きた状態でのミトコンドリア染色法を確立した。そして、内リンパ嚢のなかでも中間部の1型細胞にイオン輸送の駆動力を生み出すNa^+,K^+-ATPase活性が高く、内リンパ液のvolume調節能力を充分持つことをシミュレーションにて確認した(Miyashita et. al.,2007)。また、イオンイメージングやパッチクランプ法では同定が難しい等価のイオン輸送体であるが、イオンと水の吸収器官である腎臓にのみ発現が確認されている、Na^+-K^+-2C1^-cotransporter、Na^+-Cl^-cotransporterの内リンパ嚢上皮細胞への発現を遺伝子レベルで確認するため、RT-PCR,in situ hybridizationを行い、内リンパ上皮細胞への発現を確認した。
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