顔面神経障害が加わると、その障害部位より末梢に向かってWaller変性が生じる。電気生理学的手法によりその変化を捉えることは、障害の程度や予後を診断するのに有用である。一方、顔面表情筋においても顔面神経変性に伴う様々な変化が生じることが知られている。その変化を遺伝子レベルで捉えることで、顔面神経障害の程度診断や予後診断、リハビリテーションの指標、新たな治療法開発に応用できる可能性がある。今回、顔面神経障害後に顔面表情筋に生じるRNA発現の変化を障害程度別に検討し、障害程度のマいカーとなり得る遺伝子を、時期別に同定することを目的として研究を行った。ウィスター系ラット(8週齢)を用いて、全身麻酔(キシラジン/ケタミン筋肉注射)下に顔面神経本幹を露出し、処置を加えた。本幹を剪刀にて切断(切断群)、本幹をマイクロ持針器にて10分間圧迫(挫滅群)の2群に分けて検討を行った。顔面神経処理置後、1、2、4週間後に各2匹ずつ右顔面表情筋を採取し、検体から全RNAを抽出し、マイクロアレイ法によるRNAの網羅的解祈を行った。解析方法としては、障害程渡別にラットの全遺伝子の発現量を比較し、それぞれシャムオペ群と切断群、挫滅群の比を求め、2倍以上または0.5倍以下に変動したRNA数をカウントした。さらに、これらのデータを基に障害程度のマーカーとなり得るRNAを選出した。その結果、神経障害程度や筋採取時期によって、顔面表情筋における遺伝子発現に様々な変化が生じることが示唆されたこれらのデータを基にして、遺伝子発現量の変化が大きかった計14種類のRNAを選出した今後、リアルタイムPCR法により遺伝子発現を定量評価ることで、顔面神経麻痺の病態診断や治療のツーブレとして臨床応用が期待できると考えられた。
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