IGF-1投与下咽頭収縮筋モデルの神経下装置の観察 (実験方法) ラットは加齢群として24ヶ月齢を用いた。まず、IGF-1投与モデルを作成した、神経栄養因子IGF-1を持続的に2週間投与し、その後ペントバルビタールにて安楽死処置後、速やかに生物顕微鏡にて喉頭、下咽頭、頚部食道を一塊として摘出し、実体顕微鏡下に両側の甲状咽頭筋および輸状咽頭筋を採取した。採取した筋は3%リン酸緩衝グルタールアルデハイドにて固定後、1%オスミウム酸にて後固定した。次いで塩酸加水分解法に従って筋内結合組織を除去し、脱水、乾燥、白金蒸着後に走査型電子顕微鏡で神経筋接合部に属する神経下装置の観察を行った。 (結果) 甲状咽頭筋においては筋の結合織がうまく分解されず、観察できた神経下装置はわずか2個で一次シナプスの形態は、迷路型、陥凹型それぞれ1個のみであったため比較できなかった。輪状咽頭筋においては昨年度の研究でIGF-1を投与しなかった加齢群においては陥凹型が63.4%だったのに対し、IGF-1投与群では60%とわずかに減少していたが大差はなかった。加齢群と比較してIGF-1投与加齢群では(1)未熟な神経下装置が加齢群より多く散見された。(2)一次シナプスの溝より外側に二次シナプスが観察された神経下装置を約27%に観察できた。以上のことより加齢ラットの輪状咽頭筋においてはIGF-1投与により筋線維のremodelingがより活発に行われているのではないかと考えられた。今回は一次シナプスと二次シナプスの検討のみで定量的検討までにはいたらなかった。 今後、ラットの数を増やし、甲状咽頭筋の神経下装置の観察を進めたいと考えている。
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