研究概要 |
我々はこれまで, アレルギー性鼻炎においては, 発達したタイト結合による上皮バリア機能を有し, 抗原提示細胞であるCD11c陽性樹状細胞が上皮と同様のタイト結合分子を発現し内腔に樹状突起を伸ばしている現象を世界に先駆けて報告してきた. 一方でヒト咽頭扁桃(adenoid)上皮は, 発達したタイト結合による上皮バリア機能を有し, 外来病原体に対する生体防御の役割を担っていることが考えられる. そこで, 我々Dcytokeratin 20(Ck20)をマーカーとして,ヒト咽頭扁桃(adenoid)におけるM細胞の同定をし, in vivoおよびin vitroでのタイト結合蛋白の発現を調べた. ヒト咽頭扁桃(adenoid)および, その初代培養細胞では, occludin, JAMA, ZO-1, claudin-1, -4, -7, -8のmRNA発現が認められ, 培養細胞においてはclaudin-2, -9のmRNA発現もみられた. ヒト咽頭扁桃(adenoid)組織においては, Ck7陽性細胞がほとんどの細胞に存在していたのに比べ, Ck20陽性細胞はいくつかのランダムに存在し, ポケット状の構造を示していた. 透過型電子顕微鏡を用いてヒト咽頭扁桃(adenoid)組織を観察すると, 短い微絨毛をもったM細胞様の細胞内にCk20で標識された金粒子が同定され, さらにポケット様構造の内部にはリンパ球を取り込んでいる像が確認された. また, ヒトadenoid培養細胞においても, Ck20陽性細胞が蛍光標識した微粒子を取り込む機能があることが確認された. さらに, ヒトadenoid組織および培養細胞におけるCk20陽性細胞は, 周囲の上皮同様, タイト結合蛋白であるoccludin, ZO-1, claudin-1, -7を細胞境界領域に発現していることを観察した. これらの結果はヒト咽頭扁桃(adenoid)において, Ck20陽性のM細胞を含めた上皮におけるタイト結合が抗原認識および生体防御の両面で深く関与していることを示している. これらのヒト咽頭扁桃のCk20陽性のM細胞を指標にして, 今後ヒト鼻粘膜組織および培養鼻粘膜上皮細胞を用いて, TSLPおよびPPAR-γリガンドなどによるタイト結合のバリア機能調節をターゲットとして, 樹状細胞の抗原提示と上皮のバリア機能との関係も踏まえて, アレルギー性鼻炎の新しい治療のための基礎研究を行う予定である.
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