研究概要 |
【研究目的】耳鼻咽喉科領域のうち気道領域において,腫瘍や外傷,奇形により変形・欠損を生じると,生命に関与する重大な障害をきたす。さらに患者自身の社会生活や精神面に計り知れない影響を及ぼし,強いてはQOLの低下を招く原因となる。機能的な面では,発声,嚥下,呼吸といった日常生活における重要な機能に多大な障害を引き起こす。それゆえ,気道領域の再生は重要な課題であり,気道領域での変形・欠損部位を自己組織で再建すべく,基礎研究としてヒト組織の細胞を確実に培養し,生着・増殖可能な技術を見いだす。 【用いる材料】気道領域の手術に伴って摘出された組織で,従来破棄されていた軟骨・上皮・結合織,筋肉,脂肪織を用いる。 【細胞単離および培養方法】ヒト脂肪由来細胞の培養を行うべく,気道領域の手術に伴って摘出された皮下脂肪組織を用いた。直ちに抗生物質を含むPBSで洗浄した後,collagenase II溶液で酵素処理し細胞懸濁液にした。遠心分離にて脂肪細胞と脂肪滴を分離後,pore 70 μmのセルストレーナーで濾過し,通過した画分を脂肪由来細胞画分として10%FBSを含むDMEMを用いて培養を行った。 【結果】これまでの当科の研究で,ラットの皮下脂肪組織を用い酵素処理することで,SVFと呼ばれる細胞群の回収およびその継代培養により脂肪組織由来幹細胞(ASCs)を得ることが可能となったが,本研究においても,同様の実験系においてヒト皮下脂肪組織を用いることで,SVFおよびASCsを得ることが可能であることがわかった。 【今後の展望】ラットのASCsが気管上皮再生促進,血管内皮細胞への分化能を持っことがわかっており,今後,ヒトASCsが多分化能を有することを確認すべく,ヌードラットなどへの細胞移植を行い,組織学的に検討を行う予定である。
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