オーダーメイド抗癌剤療法をもっとも臨床に直結した形で実践するため、手術で切除された検体を用い、in vitro感受性試験としてHDRA法を行った。頭頸部がん領域におけるTS-1の感受性試験についてはこれまでに例がなく、まず実験方法の確立を行った。TS-1は5-FUの作用をCDHP(ギメラシル)にて増強させる薬剤であり、1)CDHP単独、2)5-FU+CDHPでHDRAを行う方法の2通りが考えられる。 予備実験としてCDHP単独でHDRAを行ったところ、CDHPのI. I.(Inhibition Index)は-56.5から23.8%と比較的低値であるだけでなく、マイナス、つまり増殖してしまうケースも見られたため実験系として不適当と考えた。よって5-FU+CDHPにてHDRAを行い、5-FU単剤との比較によりCDHPによる増強作用を判定することとした。CDHPの濃度はTS-1の臨床薬理データ(Hirata et al. CCR 1999)によると、AUCで5-FUの約2倍であることから、感受性試験でも同様の条件(5-FUに対してCDHPの濃度を2倍に設定)とした。また5-FUのみならず、CDDP、TXTの感受性についても同時に測定を行った。 実験方法が確立してから現在までに実際の臨床検体6症例を用いて検討した。個々の症例で薬剤毎の感受性は大きく異なり、オーダーメイド療法の必要性を再認識する結果となったが、5-FU+CDHPのI. I.は60.29(平均)で5-FU単剤のI. I.は52.09(平均)であった。CDHPによる感受性の増強効果は約15.8%(平均)であった。現在、この方法で安定した結果が得られており、実地臨床への応用が可能である。今後、症例数を重ね、検討後に発表を予定している。本研究の方法で得られる結果は術後補助治療や再発時の薬剤選択の指標となり、臨床的に大きな意義を持つものである。
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