ムチン型糖鎖異常のIgA1が腎糸球体に結合することが、IgA腎症の発症に何らかの関連をもっていることが分かってきた。しかし、これまでに糖鎖異常を血清診断することが困難であった。一方でIgA1を酵素処理しシアル酸を除去することにより糖鎖異常の検出率が改善したという報告をみとめた。そこで今回、血清や扁桃のサンプルを酵素処理ではなく酸処理することによりシアル酸の除去を試みた。ヘノッホ・シェーンレイン紫斑病(HSP)、IgA腎症患者、他の腎疾患(ORD)患者の血清と扁桃のサンプルを酸処理することによって、我々が作成した抗ヒンジ抗体やConA、HAAなどのレクチンに対する反応性を検討した。すると、今までの無処理の血清に比べ感度がおよそ100倍に上昇した。さらに、酸処理によってIgA腎症とHSPではORDに比べ有意差をもって糖鎖不全型IgA1を認めた。また、酸処理した血清をゲル濾過にて分離すると、異常IgA1のモノマーとポリマー成分に分離された。酸処理することで、シアル酸が外れるだけと考えていたが、異常IgA1は糖鎖不全によって血清中の他のタンパクと結合し複合体を合成しており酸処理は複合体を分離することで検出感度が上がることも考えられた。扁桃やHSPの血清ではこの複合体の形成は少なかった。また、複合体として結合するタンパクの分析も行った。高分子のインターαトリプシンインヒビターが検出されており、今後そのメカニズムも検討していきたい。今後これらの相互の関係が詳細に分かってくればIgA腎症のメカニズムの解明、扁桃の関与が解明できる。
|