GJB2遺伝子によってコードされるCx26は、コルチ器内の微小なイオン環境の維持に関与している可能性が示唆されている。GJB2遺伝子変異の保因者においては、コルチ器内のイオン環境の微細な異常のため、有毛細胞の軽微な機能障害や単発的な変性が発生している機序が考えられる。そこで、このような外有毛細胞の微細な病態を(1)感度の高いDPOAEで検出し、(2)耳鳴り、聴覚過敏などの徴候との関連を調べた。耳鳴、聴覚過敏の発症時、時間経過を問診し、症状の程度に関してはvisual analogue scaleを用いて評価した。純音聴力検査、DPOAEの測定を行った。今回我々は先天性両側高度感音難聴患者の末梢血からゲノムDNAを採取し、まずGJB2、GJB6のPCR direct sequenceを行いそれぞれの遺伝子におけるcoding regionの変異の存在を検索する。また、GJB6に明らかなpoint mutationが認められなかった場合には定量解析で大欠失の存在の有無を確認した。それでも、明らかにならない場合は他のギャップジャンクション蛋白をコードする遺伝子で既に難聴患者より変異が検出されているGJB3などの遺伝子を検索した。同時に、これも過去にGJB2と複合遺伝子変異による難聴を報告されているミトコンドリア遺伝子変異1555A→G変異の確認を行った。GJB2の新たな変異が発見されたが、日本人にはGJB6変異を認めなかった。
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