悪性黒色腫随伴網膜症は悪性黒色腫に随伴する網膜症であり、遺伝的に網膜変性を生じる網膜色素変性や機械的傷害で引き起こされる光傷害網膜変性と病態に類似性がみられる。そこで、同様に網膜変性を生じるモデル動物であるRCSラット(Royal College of Surgeons Rat)およびP23Hラットを用いて、基礎研究を行った。イソプロピル ウノプロストン(以下ウノプロストン)は現在抗緑内障点眼薬として臨床で使用されているプロスタグランジン系薬剤であり、薬理作用として視神経乳頭部及び後極部網膜の血流量増加による神経保護効果がある。この作用は網膜細胞にアポトーシスを起こす網膜変性疾患に対しても網膜保護効果を及ぼす可能性が示唆される。そこで、ウノプロストンの網膜保護効果を調べるために、網膜変性モデルラットにウノプロストンを連日投与して、その機能的及び形態学的変化について検討した。方法は、3週齢のRCSラット及びP23Hラット(ヘテロ)にウノプロストン点眼液を1日2回、2週間連続投与した。また、コントロールとして基剤の点眼投与を同様に行った。結果、ERGによる機能的評価では、P23Hラットにおいてウノプロストン投与群が基剤投与群よりもb波の振幅が有意に保たれていた。RCSラットでは明らかな差は見られなかった。また、光学顕微鏡による組織学的評価では、P23Hラットの外顆粒層の厚さがウノプロストン投与群で有意に保たれていた。TaqMan[○!R]PCRでは、いずれのラットにおいてもApoptosis pathwayの諸因子に差は見られなかった。以上から、ウノプロストン投与により、ある種の網膜変性モデル動物でも機能的及び組織学的変化の抑制がみられ、その有効性が示唆された。しかし、caspase等のアポトーシス関連遺伝子の発現に影響を与えなかった。したがって今後更に長期投与における分子レベルでの薬効についても検討を要すると考えられた。
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