青錐体一色型色覚の目本人2家系の赤緑オプシン遺伝子の欠失範囲の正確な同定のためにゲノム構造解析を行った。インフォームドコンセント取得の上で血液からゲノムDNAを抽出し、ダイレクトシーケンシング法で各エキソンに点変異の無いことを確認した。一方、赤緑オプシン両遺伝子の全エキソン1〜5と上流のLCR(Locus Control Region)までを含む上流領域をPCR法で増幅し、増幅の有無で欠失範囲の限定を行った。次に、非欠失領域の末端部分で欠失領域を挟むプライマーを作成して、欠失のあった場合のみ距離が近づき、増幅産物が得られるPCRを行った。増幅できた場合は、産物の塩基配列から欠失断端を決定した。その結果、家系1では、赤オプシン遣伝子の開始コドンの上流からイントロン2にかけて、約16kbの断片を欠失していることを1塩基レベルで決定した。家系2は、赤オプシン遺伝子の開始コドンの上流約28kbから下流約12kb(イントロン4)にかけて、約40kbの断片を欠失していた。この情報は、今後の本研究の課題である「両遺伝子の排他的発現調節の分子機構」の解析に有効な情報となる。 次に、両遺伝子の発現調節領域、LCR領域の解析のためのプラスミドの構築と網膜由来培養細胞での発現、cis要素と転写因子の検出を目指して、準備を進めた。該当するヒトゲノム領域を詳細に解析するとともに、同領域を含むBACクローンを決定して調達した。また、EGFP等のレポーター遺伝子、およびヒト網膜芽細胞腫由来のY79細胞も準備した。現在、BACクローンから赤オプシン、緑オプシンのプロモーターとLCRを単離し、EGFP遺伝子等を連結したプラスミドを構築している。また、マウス等の2色型色覚の哺乳類の緑オプシンのプロモーターとヒトの赤、緑オプシンプロモーターの塩基配列を比較ゲノミクスの手法、およびTRANSFAC等のデータベースを活用して比較し、LCRとの相互作用機能を有する高等霊長類に特異的なcis要索を探索している。
|