平成19年度は磁性微粒子を用いた細胞への遺伝子導入の技術(Magnetofection)によりin vitroで培養細胞に遺伝子を導入し、詳細な条件設定をおこなった。サイトメガロウイルス(CMV)由来のプロモーターにより緑色蛍光タンパク(GFP)遺伝子を発現するプラスミドと磁性微粒子を内包するリポソームを名古屋大学大学院工学研究科の協力により作成し、培養網膜色素上皮細胞(RPE)への遺伝子導入をin vitroでおこなった。最も高い遺伝子導入効率を得るための磁性微粒子、DNAの濃度、磁力、磁石の設置時間などの条件設定をおこない、選択的に磁石設置部位への遺伝子導入(31.7 cells/mm^2)が可能であることを確認した。また市販の陽性荷電脂質であるlipofectamine 2000を対照として用いて、これ(27.6 cells/mm^2)と導入効率が同等であること、そしてMagnetofectionによる遺伝子導入は細胞毒性が少ないことを確認した。またin vivoでの遺伝子導入実験に先駆けて重力と同じ方向、すなわち垂直方向への遺伝子導入ばかりでなく、水平方向への遺伝子導入が可能であるかを確認した。RPE細胞をフラスコで培養後、フラスコごと培養細胞シートを垂直に立てて水平方向に遺伝子導入をおこなったところ、lipofectamine 2000ではほとんど遺伝子導入がみられなかったのに対してMagnetofectionでは磁石設置部位への選択的遺伝子導入(31.4 cells/mm^2)が可能であった。現在、硝子体注射、網膜下注射によるin vivoでの遺伝子導入実験を開始している。
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