研究概要 |
当該年度において, 角膜上皮剥離および角膜実質創傷治癒過程における角膜実質ネットワークの破壊および層の再構築過程を, 共焦点顕微鏡を用いて観察した。また, 特に実質創傷治癒過程を観察する実験系においては, 第2次高調波発生(SHG)顕微鏡を用いて, 角膜実質を構成する主成分であるコラーゲン線維束の再生過程も併せて観察した。 1) 角膜上皮剥離モデルにおいて, 上皮剥離直後に角膜実質浅層の角膜実質細胞は消失, 無細胞領域を形成し, 角膜実質細胞ネットワークは破綻した。上皮欠損作成後3日目より角膜実質細胞は創傷作成部位周囲より無細胞領域に進展したが, 細胞間ネットワークの指標となるConnexin 43の細胞接合部位での発現は見られなかった。創傷作成後7日では徐々にConnexin 43の細胞結合部位での発現が観察されるようになり, 創傷作成後14日では細胞間ネットワークが回復した。 2) 実質創傷治癒モデルにおいて, 実質切開部位では創傷作成後3時間で実質細胞は消失し無細胞領域を形成したが, 6時間後頃より周囲からの実質細胞の進展を認めるようになり, Connexin 43の細胞結合部位での発現も観察するようになった。同時期における創傷周囲の実質コラーゲン線維束構造は, 線維束の断裂を認めるものの新たなコラーゲン線維の再構築は観察されなかった。筋線維芽細胞のマーカーであるα平滑筋アクチンの発現は, 創傷作成後7日, 14日に観察するのみであり, 実質細胞ネットワークの消失・再構築には関与しなかった。 当該年度の研究から, 角膜実質細胞ネットワークは上皮剥離刺激により広範に障害されその再構築に時間がかかること, 実質切開による実質細胞ネットワークの破壊はいち早く回復されることが明らかとなった。
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