研究概要 |
昨年度の研究から, 涙液中のICPOタンパクの検出が可能であることが明らかになったことから, 同意の得られた上皮型角膜ヘルペス患者3名から, 経時的に涙液を採取し, 臨床所見の観察およびICPOタンパクの検出を行った。経過観察中, 臨床的に上皮型ヘルペスを発症した患者はいなかった。また, 採取した涙液中からICPOタンパクは検出されなかった。新規に涙液を採取した上皮型角膜ヘルペス5例中, ICPOタンパクが検出されたのは2例であった。通年では, 上皮型角膜ヘルペスでの検出率は7例中4例(陽性率57%), ぶどう膜炎5例中2例(陽性率40%)であった。 2年間にわたる本研究により, これまで単純ヘルペス感染動物モデルにおいてのみ発現が確認されていた涙液中のICPOタンパクの発現が, 上皮型角膜ヘルペス患者由来涙液中にも発現していることが証明された。また, ICPOタンパクの発現が, 上皮型角膜ヘルペスの発生に関与している可能性も示唆された。継続した研究が必要であるが, 眼組織由来ICPOタンパクの発現を検討することは, ヘルペス性疾患の多い眼科領域においてヘルペス感染症の病態の把握及び発症機序の解明に寄与する可能性があると考えられた。
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